逆張りじゃないですよ。公立高校で野球やってた身から日本の野球を憂う気持ちで、こう思いました。
今回、金足農業が勝っていたら指導者の問題として
・エースが何百球でも1人で投げ切る
・一塁ランナーは何が何でも送りバントで送る(1アウトでも)
・きわどくないタイミングでもヘッドスライディング
応援する側の問題として、
・トップ選手をより伸びる環境で育てる考え方を否定
・設備や道具にお金を使うことを悪とする風潮
・「地元出身公立」を「公私」や「地域」の対立煽りに利用
こういうのが美談になってしまうでしょう。大注目の100回記念大会で、ですよ。
そしたらまーたこんな風潮が生まれます。いや、強化されます。
・「選手生命を削る儚いエース」を賛美
・「得点確率も得点期待値も下げる作戦」のための「思考停止の自己犠牲」を賛美
・「怪我のリスクを大幅アップ」させて「情に訴える」全力プレーを賛美
・高校野球の戦力均衡のために「プロ野球や代表チームのレベル」を下げる
・なぜかスポーツを通じて「特定地域へのヘイト」が発生
これをもう100年続ける事になってしまうのではないですか。
今回割と広く言われていたことを幾つか取りあげて疑問を呈しておきます。
- 「地方を飛び越えての野球留学はいかがなものか」
- 「エリートかき集めてカネのかかったすごい施設で野球漬けは悪」
- 「公立は緻密で確実な弱者の戦法で強豪校を倒すしかない」
- 「ボロボロのエースでなければ・・・」
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「地方を飛び越えての野球留学はいかがなものか」
まずこれを規制すると教育を受ける権利は侵害されますね。
それに、これやってしまうと逆に大阪か神奈川くらいしか優勝しなくなりますよ。
都会の強豪校を責める時によく使われるフレーズですが大阪桐蔭の選手はほとんどが関西出身です。
そもそも、土壌として大阪府下全域と兵庫県の阪神地域(尼崎、伊丹、西宮、神戸とか明石くらいまで)全体が小中学生の硬式野球が非常に盛んなんです。他にも神奈川県東部、そして広島、四国、九州の一部らへんは盛んですが、(大阪+兵庫県南東部)はその野球の盛んな地域が抱える人口が全く違います。
静岡でサッカーが強かったり、しますよね?そういう地盤の強さがこの地域にはまずあります。
だからこの地域の高校は、全国からかき集めているのではないのですよ。あんな強すぎるチームでも試合に出られる自信のある子供しか大阪の超強豪には入りません。レギュラーになれないかもしれないから。ベンチ入りもできるかわからない。それで大阪のほかの学校には行っても甲子園に行けない可能性が高い。
こんな事情で、大阪や兵庫の硬式リーグの野球エリートたちは、甲子園に出られるよう、地方のチームに行くんです。大阪桐蔭に居るのはそのさらに上澄みです。
一部の県で毎年ほぼ独占か寡占状態で同じ学校が甲子園に出てきてるところがあるのを知っている方は多いと思います。
その最たる地方が、東北ですよ。野球エリートをかき集めて、です。大阪や神奈川から野球エリートをかき集めているのは東北の強豪校ですよ。越境を禁止したら何が起きるか。果たして格差は是正されるのでしょうか。
「エリートかき集めてカネのかかったすごい施設で野球漬けは悪」
これの何がいけないのでしょう。野球がメチャクチャ得意な奴がいたらふんだんに金を使って野球の実力を伸ばしてあげるのはとてもいい教育だと思いますよ私は。
あと彼ら野球エリートはほとんど勉強していないことにされていますが、まぁそれが仮に事実だとしても勉強「時間」を競わせるのは変でしょう。岐阜から大阪桐蔭に入った今年の某ドラ1候補は医学部も視野に入る学力だそうですし、中学時代に競技スキーで優勝経験(これはもちろん、スキーの検定がどうのこうのという次元ではありません)がありますね。彼みたいなのはもちろんまれな例ですが。
甲子園にレギュラーで出ればもう就活市場では食いっぱぐれない資格を手にしたも同然です。(今のところは、ですけど)
私は今の就職活動のシステムを肯定なんてしませんが、受験以外のルートで食い扶持を稼げるようになってはいけないルールなんてないのです。
野球で大学に入ってそこで勉強して、頭脳明晰でなくともスポーツ関係の仕事をしても良いではないですか。
就活システムがおかしくても、システムを変えられないプレーヤーにとって武器になるのなら「甲子園出場」を看板に就活突破するのも良いではないですか。
仮に公立ひいきの人が望むようにエリートが強豪校に集まらずに逆に分散したら、野球エリートはみんな一番重要なポジションである「投手」に抜擢され、「全試合を投げ抜く」事になりますよ。貴重な人材は皆投手で、そのうちの「より優秀」なほどトーナメントを勝ち進んで連投を重ね、肩肘を壊して高校までで野球界から去るリスクが高い事態になります。日本の野球のレベルは全世代を通じて確実に下がりますね。
「公立は緻密で確実な弱者の戦法で強豪校を倒すしかない」
まず、遮二無二送りバントするのは緻密な野球ではありません。データ野球が緻密だというのならMLBのほうが緻密で強かですよ。
送りバントはほぼすべての場面で得点期待値も得点確率も上げません。むしろ下げる効果があります。(調べてみてください)
そもそも送りバントが最も有効なのは「相手の守備がヘタな場合」です。「地方で途中まで勝ち進む」のに有効な戦法なんですよ。強豪校に向かって連発したら勝てる確率はどんどん下がります。(今回勝ち進んでしまったのは、投手が優秀だったからです)
「ボロボロのエースでなければ・・・」
これが一番かわいそうですよね。能力があったがゆえに酷使された。散々壊れそうなレベルこえて投げさしといて「あいつがまだ元気だったら」なんて酷いにも程がある。
監督が「行けるか?」って尋ねたらどんなに無理でも「行けます」って言うでしょ、他に投手いなかったら。監督はこれで「選手を尊重した」ですからね。
さっきも書きましたが優秀なほどボロボロにされるんですよ。こんなのもうやめましょうよ。
ジャイアントキリングは確かに見ごたえがありますが、私は今回、超強豪が勝つべくして勝って、本当によかったと思います。野球は伝統芸能や神事ではないので、不合理なのは出来るだけなくしていくべきです。