啓発書などに頻繁に登場する、「自分を変える」というフレーズ。仕事でも人生でも恋愛でもダイエットでも、本を読んだらまぁ頻繁に出てきますよね。「世界は変えられない、変わるのはあなただ」とか。
本の初っ端でこういう言葉を使って、これからこの本を読む人は、こういう心構えで読めよ、という風に誘導し、中身にもこういう表現が節々に出てくるわけです。
たしかに、極論過ぎですけど、こう断言されると世界を変えるよりは自分を変えるほうが簡単そうだ、と思ってしまうものです。おお、この本は今までダメだった自分を変えてくれそうだ、と読み進めていける構造になっているわけですね。
でもちょっと考えてみてください。その本、「あなたはダメなヤツなんだ、自覚しろ」と自己否定を促しているわけですよね?
例えばダイエット。「ダメな自分を変えて新しい自分になる」って、本当に頻繁に耳に入ってきます。このジャンルでは、もはやこれが主流のような気がします。
「こうなりたい」自分があったら、今の自分を否定しなければならないのか?
…?
「自己実現」のために「まず自己否定」するんですか?ちょっとまって、それ大丈夫?
これが今日の話題です。
目次
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自己否定は何のために「させる」か
他人に自己否定を促す行為。目的は何なんでしょうか。
深いところまで探るまでもなく、これは、自分の考えで相手を上書きするときに使う洗脳の手法です。それが目的です。
「ありのまま」のあなたの価値を否定し、不安にさせ、この本はその不安を解消する手段が書いてありますよ、といってあなたに新しい考えを植え付けるのです。
黒い企業の新入社員研修で、自分の悪いところを大声で言わされたりするのは洗脳として結構有名ですが、こういった自己啓発書などのライトなものを探してみると、びっくりするほど溢れかえっている事がわかります。
書き手はその道でうまくいった経歴の持ち主でしょうから、「ありのまま」の真っ白な状態に比べて洗脳を受けたほうがロケットスタートを切れてしまうわけですね。
でもこれ、前に言及した「火事場の馬鹿力」なんですよ。
この記事では「危機感が足りない」と人を焦らせるパターンを紹介しましたが、これも同じことなんです。その本に書かれた通りに行動することは、「不安から逃れるための行動」になってしまいます。
短期的な効率は置いといて、自己実現のために、「不安から逃れるための行動」は有効なのでしょうか。
それで心身は健康でいられるのか
火事場の馬鹿力は継続して出ませんよ、とさっき貼った過去記事に書きました。もちろんこの場面でもそうです。
ダイエットが典型的なので、もうこの話で統一していきますと、「ちゃんと洗脳」されたら一気に痩せるでしょうね。
で、その本は効果があるといって売れるわけです。でも、みんな痩せた後、だんだん体重が元に戻っていくんですよ、この考え方だと。その人のキャパによるけど、そのうち馬鹿力が出なくなるからです。
場合によっては、この「危機から逃げ続ける思考」と言うものから受けるストレスで食べ過ぎてしまったりして、元の体重より重くなって落ち着いてしまうこともあるでしょう。
これが「自分を変える○○ダイエット」で起きるリバウンドの正体です。
気持ちの問題なんですよ。あ、勘違いしないでくださいね、気合と根性の問題じゃあないですよ。
自己啓発が、「危機から逃れる」「不安を解消する」という考え方で行われる限り、力尽きるポイントがそれぞれみんなにあるんですよという事です。健康ではいられなくなります。
「これでいい」から始めましょう
自己否定の感覚を原動力としてロケットスタートをするとあなたの心は燃料として燃え尽きます。
自分が幸福に向かいたいならば、自分のことを許してやらないと、その行動を肯定できません。肯定できない事を、どうやって継続したり好きになったりできるでしょうか?無理ですよ。
本を読んで自分を嫌いになり、嫌いな自分をやっつけるためにダイエットをする。自分で自分を傷つける。これではなんにも幸福になんてつながりません。
人は苦悩と苦労で成長すると思っている人が多くいますが、そりゃ違いますよ。
幸せになるために自己否定して、自分を改造した。そのジレンマに苦しんだ分、成長した!は無理がありますよね。
苦労にフォーカスを当てる必要性がないじゃないですか。苦労する過程の中で成長につながるものはあるでしょうけど、目的と手段をはっきりさせないと。苦労することが目的になってしまったら、それは不幸に一直線だと思いませんか?
もっと言うならば、成長も目的にしてはいけませんね、何か目的があって成長するならわかりますが。
話が脱線しました。復帰しましょう。
「これでいい、この方法が好き」から入って、自分の行動を肯定できる状態じゃないと、継続した努力なんてできません。だから結果的に自己啓発に成功するときというのは、それが自己否定感に襲われない方法だったときなんですよ。
これは、自己啓発書の全否定ではありません。自己否定させる文言が入っている本でも、役に立つことはあります。
でも、そこに書かれている自己否定を促す文言は、その話を聞いて欲しいが為の著者のワガママだと思って、スル―を推奨しますよ、ということです。
この記事で言えば、続きを読んでもらうために「それ大丈夫?」と書いた部分は、不安を煽っています。スルーできましたか?